こんにちは、あるいはお久しぶり。
ロジカルスタジオのディレクター、ゴウ(X id:logical__go)です。
幼い命が産声を上げた日を、ちょうど1年前の出来事のように思い出しています。
1年ぶりの後編となります。
お待たせしてしまいましたが、お付き合いのほどよろしくお願いします。
ディレクター
ゴウ
目次
前回までのあらすじ
あまりにも気付くのが遅かった妊娠。
出産まで残り6ヶ月。
関係各所と調整を進めながら、育休取得に向けた手続きを進めていく中、出産予定日まで2週間を数えることになったある日の朝。
あなたは知るでしょう。プロジェクトに予定変更は、つきものだということを。
それは破水のタイミングとて、例外ではないことを。
一度始まれば、止めることはできない。いつ、どのような時であっても。
破水
妻:「起きて、破水した」
私:「マジか」
午前4時30分
まさに寝耳に水。破水だけに。
寝ている私の頭上に降り注ぐ、妻の不安そうな声。
インシデント対応時用のスイッチが否応なく「ON」になります。
事前に示し合わせた通り、タクシー会社へ配車を取り付けようと電話をかけますが、時間は朝の4時。
当然ではあるのですが、コールしても応答がありません。
歯がゆい思いをしながらも、待つこと数分。
配車係:「はい、〇〇タクシーです」
私:「(つながった!)配車をお願いしたいのですが」
配車係:「今からですと、1時間以上かかります」
私:「(マジか)そうですか……」
既に破水は始まっているため、このまま1時間も家で待機するわけにはいきません。
他のタクシー配車会社に電話をしてみても、同じく1時間以上はかかるとのこと。
このままでは間に合わない、と他の手段を探したところ、辿り着いたのがタクシー配車アプリでした。
これしかない。一縷の望みを託し、寝ている子どもたちを起こしながら、スマートフォン片手に登録手続きを済ませます。
アプリ:「5分で到着します」
私:「マジか」
なんということでしょう。
電話口では、配車まで1時間と聞いて半ば絶望の淵に立たされていましたが、望みがつながりました。
1時間かかると言われたところが5分。
先ほどの電話で聞かされた1時間は何に必要な時間だったのかという気持ちもありますが、デジタルトランスフォーメーションの実力とやらを見せつけられた気分です。
アプリ内で、ドライバーの方とやり取りもできるのも良いですね。
「妊婦であること」「破水していること」「目的地の病院」など諸々の経緯と事情も相談できるので、ただ便利というだけでなく、とても助かりました。
圧倒的な費用対効果を体感して、「電話でタクシー会社に配車依頼をする」というサービスは、おそらく今後なくなっていくんだろうなあとも感じるシーンでした。
午前5時
予定通りにタクシーが到着。必要最低限の荷物を取りまとめ、病院に向かって出発です。
子どもたちもことの重要性をわかってくれていたのか、朝早くにも関わらず、すぐに準備してくれました。
(学校はお休みにすることも伝えていたので、子供心にテンションが上がったのかもしれません)
移動中の時間を使って、実家の両親と会社の上長に連絡。
突然のことではありますが、だからこそ早めの連絡と共有が必要です。
午前5時という早朝ではありますが、できるだけ早くに確認してもらえるよう、メッセージを投げておくに越したことはありません。
午前5時20分
病院着。
新型コロナウィルス感染防止の観点から、PCR検査が必要になるため私と子どもたちは院内へは入れない、ということを伝えられます。
何とも歯痒いですが、妻だけで出産に臨むことになりました。
緊急外来窓口で妻を見送り、ただ、待ちます。
妻と、産まれてくる子の無事を祈りながら。
子どもたちがお腹を空かせはじめたので、近くにあったコンビニで食料を仕入れ、手早く朝食を済ませます。
暇を持て余した長男が側転を成功させたり、次男もそれを見て側転によく似た何かを成功させたりと 微笑ましい時間でもあったのですが、正直それどころでもなく。心ここに在らず。
平均的な出産所要時間は、初産婦で10〜12時間、経産婦で4〜6時間と言われています。
数年前、長男の出産に立ち会い、陣痛から破水、出産まで半日以上かかったあの日のことが脳裏に蘇りました。
今日は長い1日になる。そんな覚悟を決めてもいました。
午前7時30分
小学校の先生方が出勤する時間に合わせて、今日は学校をお休みにさせてもらうよう連絡を入れます。
事前に連絡帳で近況を伝えていたので、すんなり了承。今日の時点で発生しうる、子どもたちに関する懸念はなくなりました。
出産
突如、手持ちのiPhoneにFacetimeの着信。
午前8時
発信元は、妻。
出産が本格的に始まるとしばらく通信もできなくなるから、その前の連絡かなと思い通話ボタンをタップ。
すると、iPhoneのディスプレイには妻と、初めてみる赤ん坊の姿が。
グッモーニンベイビー。ハロー、ワールド。
妻:「産まれた」
私:「マジか」
妻:「7時7分に」
私:「マジか」
いやまさかそんな。あまりにもいきなりでは。ご生誕おめでとうございます。
こちとら「今日は長い1日になりそうだ」と、ほんの1時間前に覚悟を決めたばかりだというのに、その頃にはすでに産まれていたわけですね。
親の心子知らず。こちらの心配などどこ吹く風よとばかりに、元気に産声をあげてくれていたのでした。
「事実に感情が追いつかない」という現象を身をもって経験したわけですが、病院に着いたのが5時20分、産まれたのは7時7分。
出産所要時間は実質、1時間30分にも満たない計算になります。
結果としては、驚くほどのスピード出産。
これでもかというくらいのド安産だったのでした。
1人目は普通分娩を選択したのですが、妻にとっては1人目が痛すぎたこと、それによって回復にも時間がかかったというフィードバックもあり、2人目は無痛分娩を選択しました。
その経緯もあって3人目も無痛分娩が選択できる病院を選んだのですが、破水があまりに唐突だったために無痛分娩を実施するためのリソースを確保する間もなく、しかし無事に出産できたという形になります。
高齢出産による母体への負荷もよく聞くところでしたので、そういった意味でも幸運でした。
振り返ってみると、突発的な事態の中でもいくつもの幸運に救われていたことがわかります。
よかった。本当によかった。
コロナ禍ということもあり、その場では直接抱くことこそ叶いませんでしたが、手元のディスプレイに映る新しい命。
改めて出産の尊さと、無事に生まれてきてくれたことへの幸運を噛み締めるのでした。
子どもたち、両親、妻方の親、そして会社の上長にも産まれた旨を伝えます。
当日は有休申請を行いましたが、後日、この出産当日より育休に入るよう調整していただきました。
午前9時
病院の受付窓口が開くと同時に、入院手続きを始めます。
早朝から破水、出産、入院というフローを経たため、妻が病院で過ごすための十分な用意ができていません。
不足している物資を妻に届けるため、子どもたちは実家の両親に預けて、別行動をとることにしました。
自宅に荷物を取りに戻り、妻の衣類や歯ブラシ・コップ等の入院セット、退院する時に必要な抱っこ紐やベビードレスを確保。
哺乳瓶や消毒器など、まだいいかなと思って購入を先送りにしていた器具類は、家と病院の間にあったアカチャンホンポで一緒に購入。
電車移動の間は「産まれたかあ」と感慨に浸り、疲労のあまりちょっと乗り過ごしたりしながらも妻の待つ病院に荷物を届け、長かった1日は終わりを迎えるのでした。
その後は母子ともに問題なく、5月の末に無事退院。
祖父に三男を抱いてもらうというささやかな親孝行も叶ったので、ひと段落です。
育休
無事出産を迎えてめでたしではありますが、これは始まりにすぎません。
母体は出産した後の状態から、元の状態に戻ろうとする産褥期を迎えます。
この間およそ8週間。妻には心身ともに大きな負担がかかるため、安静にしておく必要があります。
育休申請した期間は、この産褥期にあたる2ヶ月の間。
なるべく早くの業務復帰も考えていたので、妻には絶対安静を心がけてもらうことにしました。 というわけで、怒涛の主夫生活が始まります。
大きく午前と午後にわけて、育休期間中、発生したタスクを大まかに書き出してみました。
細かく書き出せばキリがありませんが、振り返ってみると日々多彩なタスクが発生していることがわかりますね。
他にも各種証明書類の発行といった事務手続きや、生育に問題がないかを確認する定期検診、無事な成長を祝うお宮参りといった行事もあります。
体感ではルーティン6割、アクシデント4割というところでした。
今でこそ1歳を迎えて元気に立ち歩きを始め、離乳食も卒業したという段階ですが、 アクシデントは今でも多く、目を離すと何をやらかすかわからないのは変わりません。
午前のタスク
- 三男のおむつ交換、ミルク(随時)
- 長男、次男の登校準備
- 着替え、歯磨き、洗顔、健康観察カード記入
- 朝ごはん
- 長男、次男の見送り
- 朝の挨拶当番(PTA)
- 食器洗い
- 三男の沐浴
- 洗濯
- 掃除
- ゴミ捨て
- 冷蔵庫確認
- 昼と夜の献立設計(妻へのヒアリング含む)
午後のタスク
- 昼ごはん(妻と私。休日は子どもたちも含む)
- 食器洗い
- 食材・日用品の買い出し
- 三男と遊ぶ、吐き戻し時の着替え・洗濯
- 長男、次男の宿題チェック
- 晩ごはん(家族全員分)
- 長男・次男の風呂、寝かしつけ
- 三男の寝かしつけ
- 食器洗い
- 翌日の準備
- 会社のSlack確認、近況投稿(質問があれば回答や対応)
イベント(出生直後〜2ヶ月)
- 出生届提出、住民票発行
- 健康保険証発行
- 医療証発行
- 産後2週間検診
- 産後1ヶ月検診
- お宮参り(写真撮影)
- 予防接種
タスクの概要
育児に関わる主要タスクのうち、いくつかの概要をピックアップしてみます。
ミルク、寝かしつけ
我が家では諸事情あって、全て粉ミルクで進めていました。
男でもミルクがの準備や授乳ができるため、妻の負荷を下げられる意味では良かったと思います。
頭が据わっていない時期の授乳は、とにかく抱きかかえなどを慎重に行ましょう。
ミルクを飲ませた後は、たとえ少量でも「げっぷ」を出させてあげるのを、忘れないようにしたいですね。
ちょっとだけなので大丈夫かなと油断していると、前に飲んだ分と合流したのか盛大に戻す事もあります。
新生児の頃は、ミルクとお昼寝の間隔も短く、ひと息つく間もないほどに時間に追われます。
授乳、洗濯、哺乳瓶の洗浄・消毒、白湯の準備、仮眠といった必須タスクを効率よく回していきましょう。特にまとまった睡眠時間が確保できないと、人間は疲弊します。思わぬミスの火種にもなりかねないため、休むタイミングはお互いに確保するようにしておきたいですね。
ミルクを飲ませていく量や間隔は、妻と共有していきました。
飲む量が少なくて不安になる日もありましたが、1週間くらいのスパンで帳尻を合わせる気持ちで構えると、幾分気は楽になるかと思います。
寝かしつけ、特に夜泣きは子どもごとに個人差が大きいかなと思います。
今回の場合は背中センサー、高さセンサーが共に高精度で、一定以上の高さで抱っこしないと泣き叫び、抱っこして寝たかと思い、迂闊に布団に下ろすと即座に覚醒する、そんなパターンでした。
洗濯
生まれた季節にもよりますが、今回は6月と比較的暖かな季節だったので半袖の短肌着を用意しました。
朝の沐浴を済ませた後に肌着やガーゼをセットで洗濯機の中に放り込む、と言う通常対応と、ミルクの吐き戻しや、おむつが決壊したといった緊急対応の2種類が発生する点を踏まえておくといいと思います。
洗濯してローテーションする前提ではありますが、全て洗濯中という状態は避けたいので、多めに用意しておきたいですね。
妻や子どもたちの洗濯も同時に行う場合は、洗濯ネットに入れて欲しいものなど、事前にヒアリングをしておきましょう。
沐浴
1日一回くらいの頻度で行います。
私は午前中、子どもたちが小学校へ行くのを見送ったタイミングで行っていました。
エアポンプで膨らませるタイプのベビーバスに、沐浴液を規定量入れて体を洗います。
後頭部を湯船へ沈めてしまわないように支えながら洗うのですが、初めての方は緊張すると思います。
私も今回で3人目になるのですが、やはり緊張しました。
産まれてからわずかな間、赤ちゃんは気持ちがいい時には唇を尖らせて、口笛でも吹くような顔つきになると聞きます。
沐浴は、まさにその顔が見られる絶好のチャンス。
なかなかこういったタイミングでしか得られない表情ですので、世のお父さんにはぜひ体験していただきたいと思います。
また、全身をくまなく洗いますので、体つきや皮膚の状態、表情などのチェックが行えるタイミングでもあります。
わずかな違和感が、思いも寄らぬ病気の初期症状という可能性も捨てきれません。
あれ?となった時は、なるべく家族と共有しておきたいですね。
料理・食器洗い
料理に関しては、昔から作ることが好きだったので苦ではありませんでした。
その一方でレパートリーが偏らないよう、あるいは枯渇しないように新しいレシピを探して、レシピサイトや料理系YouTuberさんのチャンネルを散策しています。
自分で好みの料理が作れるようになると、QOLも上がり、妻の負担を減らせ、コストも抑えられるので一石三鳥です。
また、プロジェクトマネジメントの観点でも「料理をする」という行為には相応の学びがあります。
最終的なゴール(食べた相手が美味しいと喜んでくれる)を目指して何をするのか。
メニューの選定に始まり、リソース状況(冷蔵庫の中身やストック類)、スキル、設備、調理時間など、考慮しておきたいスコープはそれなりに広くあります。
マネージャーの方はもちろん、エンジニアの方にとっても、最終的な成果物を意識したイメージ構築に大きく寄与するのではないでしょうか。
しかしながら、料理は日々発生するタスクですが、そもそも育児は大量のエネルギーを使います。
もちろん色々あって、気力体力共に尽き果てる日もあるでしょう。
そんな時は、無理せずデリバリーやスーパーの惣菜などを活用するのも一つかと思います。
また、ホットクックなどの自動調理器を導入して、料理を作るコストを下げるのも一つでしょう。
一人暮らしですとコンビニの方が確かに安くて選択の幅が広いのですが、未経験からいざ料理を作ろうとしても、すぐに狙い通りの味が出せるものではありません。
長期的にみると生活していく以上、無駄になる機会が少ないのも魅力の一つです。
将来的には作れるようになりたいな、とお考えでしたら、始めるに遅すぎるということはないので、挑戦してみるのはいかがでしょう。
長男次男が食べ盛りなので、唐揚げも作ります。6月でしたが台所は灼熱の戦場でした。
会社のSlack確認、近況投稿
育児休業中とはいえ、チームメンバーとのコミュニケーション手段は保持しておく方がいいでしょう。
しばらく何の音沙汰もない状態から報告するよりは、ある程度コンスタントに情報共有する体制を作ることで、職務復帰時のギャップも低減できると思います。
定期的にでも子どもの写真や日常をアップしておくことで、いざという時の心理的ハードルは下げられるかなと感じました。
「チームのみんなに私のかわいい子どもを見て欲しい」と言う親バカ的な欲求も満たせるので、私は存分に活用しています。
子どもたちの写真に、チームメンバーから「かわいい」「らぶい」といったスタンプが押されていると、やはり嬉しいわけですよ。
健康診断、予防接種
父親という立場では意外と触れる機会が少ない一方で、育児をする上での重要なドキュメントの一つに、「母子健康手帳」があります。
経験からすると、プロジェクトを成功に導くためは、ドキュメントの精度もさることながら、メンバーのプロジェクトに対する理解の深さ・解像度の高さが大きな要因となります。
そういった観点では、この「母子健康手帳」はある種の「仕様書」と言えるでしょう。
妊娠時から母親にあたる方が管理されるのが一般的かと思いますが、乳幼児の健康指導に関する資料でもあるため、父親にあたる方にもぜひご一読いただくことをお勧めします。
特に出生時体重や授乳量、体重増加率のグラフは成長の指標になりますし、父母間で育児に対する目的意識をそろえる補助線としての役割も期待できます。
私自身、長男から3男まで全員の健康診断や予防接種へ連れて行っていますが、こういったイベントを一緒に経験していくことで、父親としての実感を得ていくという側面もあるように思えました。
復帰して1年が経とうとしていますが、その中で新型コロナウィルスやインフルエンザといった流行りの感染症は、完全には回避することはできませんでした。
生まれて6ヶ月の子が新型コロナに見做し感染という扱いになった時は、さすがに色々と大変でしたね。当時騒がれた、発熱外来の厳しさを身をもって体感しました。
現在は子どもの体調が急に悪くなった時も、必要に応じて午前休・午後休など柔軟に取得が可能なため 平時には妻に任せつつ、緊急時には私が病院に連れて行く、といった体制が構築できています。
それでもしっかり回復し、妻子共に健康でいられるのは、育休が十分に取れたお陰かなと感じています。
育休明け、そして現在へ
子どもの成長を肌身に感じつつ、2ヶ月が経過しようとした頃、育休が終わって業務への復帰に向けた予定を立て始めます。
会社とのコミュニケーションはSlackを通じて行っていたため、職場復帰に大きな影響はありません。
具体的にはいつ頃復帰するのかを会社に伝え、お互いに準備を進める方針となりました。
育休の間、業務を引き継いでいただいた方には、今でも感謝しています。
最後に
駆け足気味でのレポートでしたが、育休をいただいた2ヶ月間を振り返ってみました。
もちろん育休が明けてからも、仕事と家庭、育児、そして自分自身と向き合う日々は続きます。
この記事が、育休を考えている方、将来のライフステージを考える上で育休のイメージを固めたい方のお役に立てれば幸いです。
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